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指導計画の作成に当たっては、第2章(子どもの発達)、前章(保育の内容)及びその他の関連する章に示された事項を踏まえ、特に次の事項に留意しなければならない。 ア 発達過程に応じた保育 (ア)3歳未満児については、一人一人の子どもの生育歴、心身の発達、活動の実態等に即して、個別的な計画を作成すること。 (イ)3歳以上児については、個の成長と、子ども相互の関係や協同的な活動が促されるよう配慮すること。 (ウ)異年齢で構成される組やグループでの保育においては、一人一人の子どもの生活や経験、発達過程などを把握し、適切な援助や環境構成ができるよう配慮すること。 ①発達過程に応じた保育 【3歳未満児の指導計画】 3歳未満児は、特に心身の発育・発達が顕著な時期であると同時にその個人差も大きいため、一人一人の子どもの状態に即した保育が展開できるよう個別の指導計画を作成することが必要です。 子どもの1日24 時間の生活全体の連続性を踏まえて、家庭との連携を密にとっていきます。保護者の思いを受け止め、尊重しながら、「共に育てる」という基本姿勢のもとで家庭との連携を指導計画に盛り込んでいくことが求められます。 また、3歳未満児は歩行の確立や言葉の習得、自我の育ちなど様々な側面で人間としての基本的な発達が著しく見られると同時に、心身の未熟性の強い時期です。したがって、複数担任での保育士等の連携はもちろんのこと、栄養士・調理員・看護師等との緊密な協力体制のもとで、保健及び安全面に十分配慮することが必要です。さらに、柔軟なかたちでの担当制の中で、特定の保育士等が子どもとのゆったりとした関わりを持ち、情緒的な絆を深められるよう指導計画を作成することが大切です。 計画は、月ごとに個別の計画を立てることを基本として、子どもの状況や季節の変化などにより、月ごとの区分にも幅を持たせ、ゆったりとした保育を心がけることが必要です。 集団生活の中で、一人一人の個人差にどれだけ対応できるかは重要な課題です。温かな雰囲気を大切にし、子どもが興味を持った好きな遊びが実現できる環境が用意されていること、不安な時や悲しい時に頼れる保育士等の存在が必要です。 【3歳以上児の指導計画】 3歳以上児の指導計画は、組やグループなどの集団生活での計画が中心となりますが、言うまでもなく集団は一人一人の子どもによって形成されるものです。個を大切にする保育を基盤として、子どもが集団において安心して自己を発揮し、他の友達と様々な関わりを持ち、一緒に活動する楽しさを味わい、協同して遊びを展開していくことにより仲間意識を高めていくことに視点をあて、計画することが求められます。 これらのことを踏まえ、3歳以上児の指導計画においては、一人一人の子どもの主体性が重視されてこそ集団の育ちがあるという点を十分に認識した上で作成することが重要です。 【異年齢の編成による保育の指導計画】 様々な年齢の子どもたちが共に生活する場という保育所の環境を生かし、異年齢編成での保育によって自分より年上、年下の子どもと交流する体験を持つことで、同一年齢の保育では得られない諸側面の育ちが期待されます。 異年齢の編成による保育では、自分より年下の子どもへのいたわりや思いやりの気持ちを感じたり、年上の子どもに対して活動のモデルとしてあこがれを持ったりするなど、子どもたちが互いに育ち合うことが大切です。 また、こうした異年齢の子ども同士による相互作用の中で、子どもは同一年齢の子ども同士の場合とは違った姿を見せることもあります。このように、異年齢の子どもたちが関わり合うことで、日々の保育における遊びや活動の展開の仕方がより多様なものとなることが望まれます。一方、異年齢の編成の場合は子どもの発達差が大きいため、個々の子どもの状態を把握した上で保育のねらいや内容を明確に持った適切な環境構成や援助が必要です。こうした配慮により、遊びが充実したものになり、子ども同士での多様な関わりがくり広げられるようになるのです。 また、保育士等の意図性が強くなると、子どもが負担感を感じることも考えられます。日常的な生活の中で、子ども同士が自ら関係をつくり、遊びを展開していけるように十分に配慮します。 イ 長時間にわたる保育 長時間にわたる保育については、子どもの発達過程、生活のリズム及び心身の状態に十分配慮して、保育の内容や方法、職員の協力体制、家庭との連携などを指導計画に位置付けること。 ②長時間にわたる保育 【生活リズムや心身の状態への配慮】 保育所で長時間にわたって過ごす子どもについては、特に心身の健やかな発達を保障できるよう様々な配慮が必要となります。指導計画を作成する際には一日の生活の流れを見通し、一人一人の子どもの発達過程や心身の状態に基づいて行き届いた対応をすることが求められます。 延長保育・夜間保育の場合は特に、家庭的でゆったりとくつろげる環境や保育士等の個別的な関わりなど、子どもが負担なく落ち着いて過ごせるよう心がけることが重要です。また、通常の時間帯における保育との関連やバランスを視野に入れ、一日の中で気持ちを切り替えられるよう配慮することも大切です。さらに、夕方以降の時間帯においては、一日の疲れや保護者を待つ気持ちを受け止め、保育士等が温かく関わることが求められます。 【家庭との連携】 長時間にわたる保育においては、とりわけ家庭との密接な連携が必要となります。保護者の状況を理解し心身の状態に配慮しながら、子どもの生活の様子や育ちの姿を伝えあい、子どもの思いや一日の全体像について理解を共有することが重要です。また、延長保育や夜間保育で食事や補食を提供する場合には、子どもの生活リズムを視野に入れながら、一日の食事の時間や量、内容などについて保護者と情報を交換することが必要です。 子どもが保育所において安心して充実した毎日を過ごせることは、保護者にとって大きな支えとなり、保育所に対する信頼感へとつながります。 【職員の協力体制】 保育時間の長い子どもの保育では、職員の勤務体制により一日の中で複数の職員が担当することになります。引き継ぎの際には職員間での正確な情報の伝達を心がけ、すべての職員が協力して、子どもや保護者が不安を抱くことのないよう十分に配慮しながら関わっていくことが必要です。 また、指導計画の作成とその実践においても、各々の保育士等が一日の保育の流れを把握した上で、それぞれの担当する時間や子どもにふさわしい対応ができるよう、保育のねらいや内容等について理解を共有して取り組むことが重要です。 ウ 障害のある子どもの保育 (ア)障害のある子どもの保育については、一人一人の子どもの発達過程や障害の状態を把握し、適切な環境の下で、障害のある子どもが他の子どもとの生活を通して共に成長できるよう、指導計画の中に位置付けること。また、子どもの状況に応じた保育を実施する観点から、家庭や関係機関と連携した支援のための計画を個別に作成するなど適切な対応を図ること。 (イ)保育の展開に当たっては、その子どもの発達の状況や日々の状態によっては、指導計画にとらわれず、柔軟に保育したり、職員の連携体制の中で個別の関わりが十分行えるようにすること。 (ウ)家庭との連携を密にし、保護者との相互理解を図りながら、適切に対応すること。 (エ)専門機関との連携を図り、必要に応じて助言等を得ること。 ③障害のある子どもの保育 【保育所における障害のある子どもの理解と保育の展開】 保育所においては、すべての子どもが、日々の生活や遊びを通して共に育ち合っています。障害のある子どもが安心して生活できる保育環境となるよう十分に配慮します。一人一人の障害は様々であり、その状態も多様であることから、保育士等は、子どもが発達してきた過程や心身の状態を把握し、理解することが大切です。子どもとの関わりにおいては、個に応じた関わりと集団の中の一員としての関わりの両面を大事にしながら、保育を展開していきます。 【個別の指導計画と支援計画】 保育所では、障害のある子ども一人一人の実態を的確に把握し、安定した生活を送る中で、子どもが自己を十分に発揮できるよう見通しを持って保育することが必要です。そこで、必要に応じて個別の指導計画を作成し、クラス等の指導計画と関連づけておくことが大切です。その際には、障害の状態や生活や遊びに取り組む姿、活動への関心や参加の様子、さらには友達との関わりなどをていねいに把握して、クラス等の指導計画と個別の指導計画をどう関連させていくのか、環境構成や援助として特に何を配慮していくのかなど、具体的に見通すことが大事になります。また、計画に基づく支援が、長期的にどのような方向性をめざしていくのか、担当保育士をはじめ、看護師等や栄養士、嘱託医などが連携することが基本です。学校教育において、幼児期から学校卒業後まで一貫した支援を行うために、個別の教育支援計画の作成が進められている今日、保育所においても、市町村や地域の療育機関などの支援を受けながら、長期的な見通しを持った支援のための個別の計画の作成が求められます。その際、各保育所においては、保護者や子どもの主治医、地域の専門機関など、子どもに関わる様々な人や機関と連携を図ることが重要です。こうした取組が小学校以降の個別の支援への連続性を持つことになります。 【職員相互の連携】 障害のある子どもの理解と援助に当たっては、担当保育士だけではなく、職員全体で共通理解を図りながら取り組むことが基本です。そのためには、施設長が中心となり、職員全体で定期的かつ必要に応じて話し合う機会を持つことが求められます。担当保育士を中心にその日の子どもの心身の状況に応じて、職員間で協力しながら保育を進めていくことが重要です。 【家庭との連携】 障害のある子どもの理解と援助は、子どもの保護者や家庭との連携が何よりも大切になります。保育所と家庭での生活の状況を伝え合うことで、子どもの理解を深め合うことや、保護者の悩みや不安などを理解し支えていくことなどが可能となります。こうした連携を通して保護者が保育所を信頼し、子どもについての共通理解のもとに協力し合う関係を形成することができます。 また、他の子どもの保護者に対しても、保育所での生活の中で、子どもが互いに育ち合う姿を通して、障害についての理解が深まるようにすることが大切です。その際、子どもとその保護者や家族に関するプライバシーの保護には十分留意します。 【地域や専門機関との連携】 障害のある子どもの保育に当たっては、地域の専門機関と連携し適切なアドバイスを受けながら取り組んでいくことが必要となります。そのためには、保育所と専門機関とが定期的に、または必要に応じて話し合う機会を持ち、子どもへの理解を深め、保育の取組の方向性について確認し合うことが大事です。 また、就学する際には、保護者や関係する専門機関がそれまでの経過やその後の見通しについて協議し、その子どもにとって最も適していると思われる支援のあり方を考えていくことが求められます。 エ 小学校との連携 (ア)子どもの生活や発達の連続性を踏まえ、保育の内容の工夫を図るとともに、就学に向けて、保育所の子どもと小学校の児童との交流、職員同士の交流、情報共有や相互理解など小学校との積極的な連携を図るよう配慮すること。 (イ)子どもに関する情報共有に関して、保育所に入所している子どもの就学に際し、市町村の支援の下に、子どもの育ちを支えるための資料が保育所から小学校へ送付されるようにすること。 ④小学校との連携 【小学校との連携において前提とすべきこと】 子どもの生活と発達は、乳児期から幼児期を経て学童期へと連続しています。遊びや生活の中で積み重ねられてきた子どもの様々な側面の育ちが、小学校以降の生活や学びの基盤となります。指導計画の作成に当たっては、こうした乳幼児期を基盤とする生涯発達という観点を持って、保育所での育ちがそれ以降の生活や学びへとつながっていくよう保育の内容の工夫を図ることが大切です。子どもは、乳幼児期にふさわしい遊びや生活における身体的・具体的な体験を通して発達していきます。すなわち、小学校での生活や学びにつながる保育とは、これらを先取りするということではありません。保育の中で創造的な思考や主体的な生活態度などの基礎が培われるよう毎日の生活や遊びを充実させることが大切です。 また、就学に向かう時期においては、子どもが小学校生活に対して期待感をもてるよう配慮するとともに、入学してから一人一人の子どもが生き生きと自分を発揮できるようにするため、小学校と積極的に連携を図ることが必要となります。 【小学校との連携のあり方】 子どもの育ちを考えていくためには、保育所と小学校の関係者が直接的に交流し、双方における生活・学びの実情や子どもの育ちの歩みと見通しについて、互いに理解を深めることが大切です。 また、就学に際して、小学校を訪問したり小学生と交流する機会を設けて、子どもが小学校生活に対する見通しを持てるようになることも重要です。きょうだいや地域の子ども集団において年上の子どもと接することが少なくなりつつある現在においては、こうした子ども同士の触れ合いを通して、子どもが自ら成長していくイメージを持つことは貴重な体験となります。行事等を活用するだけでなく、より日常的に接する機会を持つことが望まれます。 保育所、幼稚園、小学校が合同で研修を行ったり、行政及び他の専門職も含めた地域の連絡会を設けたりすることも重要です。 また、保育所の子どもと放課後児童クラブの子どもとの交流や、職員同士の交流および情報共有によって相互理解を図ることなども求められます。地域全体で連携を図りながら情報を共有し、一人一人の子どもの育ちを共に考える姿勢を持つことが大切です。 【子どもの育ちを支える資料の送付】 今回の保育指針の改正により、すべての保育所入所児童について、保育所から就学先となる小学校へ、子どもの育ちを支える資料を「保育所児童保育要録」(以下「保育要録」という。)として送付することになりました。これまで述べてきたように、保育所での子どもの育ちをそれ以降の生活や学びへとつなげていくことは、保育所の重要な役割です。保育所では保育の内容や方法を工夫したり、小学校への訪問や教員との話し合いなど顔の見える連携を図りながら、子どもの日々の保育を充実させ、就学への意欲を育てていくことが求められます。 さらに、保育所生活を通して子どもが育ってきた過程を振り返り、その姿や発達の状況をとらえ的確に記録することが必要です。こうした記録をもとに、就学先に送付する資料として簡潔にまとめたものが保育要録であり、小学校において子どもの育ちを支え、子どもの理解を助けるものとなることが期待されます。 保育要録は、保育における養護及び教育に関わる5領域の視点を踏まえて記載するなど、子どもの状況などに応じて柔軟に作成していきます。また、一人一人の子どもの良さや全体像が伝わるよう工夫して記すとともに、子どもの最善の利益を考慮し、保育所から小学校へ子どもの可能性を受け渡していくものであると認識することも大切です。さらに、保護者との信頼関係を基盤として、保護者の思いを踏まえつつ記載するとともに、保育要録の送付については、入所時や懇談会などを通して、保護者に周知しておくことが望ましいでしょう。個人情報保護や情報開示に留意することも必要です。 次頁に保育要録の「様式の参考例」を示しましたが、この様式を参考に、各市町村が、地域の実状等に即して、保育要録の様式を作成していきます。 なお、「保育所保育指針の施行に際しての留意事項について」(平成20年3月28 日雇児保発第0328001 号)に記載されている事項についても十分に留意します。 平成年月日生 (保育所名) (所在地) 〒- 平成年月日~ 平成年月日( 年か月) ※ ※ ※ ※ 社会生活における望ましい習慣や態度を身に付ける。 身近な事物を見たり、考えたり、扱ったりする中で、物の性質や数量、文字などに対する感覚を豊かにする。 「教育に関わる事項」は、子どもの保育を振り返り、保育士の発達援助の視点等を踏まえた上で、主に最終年度(5,6歳)における子どもの心情・意欲・態度等について記載すること。 養護(生命の保持及び情緒の安定)に関わる事項(子どもの健康状態等) 「子どもの育ちに関わる事項」は子どもの育ってきた過程を踏まえ、その全体像を捉えて総合的に記載すること。 項目 健 康 身近な環境に親しみ、自然と触れ合う中で様々な事象に興味や関心を持つ。 人の言葉や話などをよく聞き、自分の経験したことや考えたことを話し、伝え合う喜びを味わう。 日常生活に必要な言葉が分かるようになるとともに、絵本や物語などに親しみ、保育士や友達と心を通わせる。 保育所児童保育要録 【様式の参考例】 保育期間 就学先 生年月日 ふりがな性別 氏 名 保育所名 及び所在地 表 現 明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう。 自分の体を十分に動かし、進んで運動しようとする。 健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付ける。 生活を楽しみ、自分の力で行動することの充実感を味わう。 環境言葉 身近な人と親しみ、関わりを深め、愛情や信頼感を持つ。 人間関係 自分の気持ちを言葉で表現する楽しさを味わう。 教育( 発達援助)に関わる事項 子どもの育ちに関わる事項 「養護(生命の保持及び情緒の安定)に関わる事項」は、子どもの生命の保持及び情緒の安定に関わる事項について記載すること。また、子どもの健康状態等について、特に留意する必要がある場合は記載すること。 子どもの最善の利益を踏まえ、個人情報保護に留意し、適切に取り扱うこと。 担当保育士名施設長名 いろいろなものの美しさなどに対する豊かな感性を持つ。 感じたことや考えたことを自分なりに表現して楽しむ。 生活の中でイメージを豊かにし、さまざまな表現を楽しむ。 身近な環境に自分から関わり、発見を楽しんだり、考えたりし、それを生活に取り入れようとする。 印印 オ 家庭及び地域社会との連携 子どもの生活の連続性を踏まえ、家庭及び地域社会と連携して保育が展開されるよう配慮すること。その際、家庭や地域の機関及び団体の協力を得て、地域の自然、人材、行事、施設等の資源を積極的に活用し、豊かな生活体験を始め保育内容の充実が図られるよう配慮すること。 ⑤家庭及び地域社会との連携 子どもの発達を支えるためには、保育所と家庭及び地域社会における生活経験が、それぞれに実感を伴い充実したものとなることはもちろん、相互に密接に結びつくことが重要です。 保育所での遊びや活動の中で子どもたちが味わった様々な実体験が家庭や地域での生活に生かされるとともに、家庭や地域社会で子どもが身近な環境に触れそれぞれに経験したことが、保育所での生活に生かされていくことが大切です。こうしたことにより子どもは、身の回りの事物に対する興味・関心を広げ、周囲の人々との関わりをより豊かなものにしながら、友達との関わりを深めていきます。 したがって、指導計画を作成するに当たっては、家庭や地域社会を含めた子どもの生活全体を視野に入れながら、子どもの抱いている興味や関心、置かれている状況などに即して、必要な経験とそれにふさわしい環境の構成を考えることが求められます。 そして、そのためには、保育士等が一生活者としての視点や感覚を持ちながら毎日を営む中で、家庭や地域社会と日常的に十分な連携をとり、一人一人の子どもの生活全体について互いに理解を深めることが不可欠となります。 また、日常生活において、子どもたちは、地域の自然に接したり、異年齢の子どもをはじめとする幅広い世代の人々と交流したり、社会の様々な文化や伝統に触れたりする直接的な体験が不足しがちとなっています。 保育所ではこれらのことを十分に踏まえて、保育所内外において子どもが豊かな体験を得る機会を積極的に設けることが必要です。その際、特に保育所外での活動においては、移動も含め安全に十分配慮することはもちろんのこと、子どもの発達や状態を丁寧に把握し、一人一人の子どもにとって無理なく充実した体験ができるよう指導計画に基づいて実施することが重要となります。 これら様々な地域の資源を活用するためには、保育士等が日頃から身近な地域社会の実情をしっかりと把握しておくと同時に、地域から保育所の存在やその役割が認知され、子どもや保育について理解や親しみを持って見守られていることが前提となります。 地域社会との積極的な交流や保育に関する情報の発信など、地域との密な連携を図りながら子どもの生活がより充実したものとなるよう指導計画を作成することが求められます。
https://w.atwiki.jp/jobmemo/pages/110.html
(1) 保育所に入所している子どもの保護者に対する支援は、子どもの保育との密接な関連の中で、子どもの送迎時の対応、相談や助言、連絡や通信、会合や行事など様々な機会を活用して行うこと。 (2) 保護者に対し、保育所における子どもの様子や日々の保育の意図などを説明し、保護者との相互理解を図るよう努めること。 (3) 保育所において、保護者の仕事と子育ての両立等を支援するため、通常の保育に加えて、保育時間の延長、休日、夜間の保育、病児・病後児に対する保育など多様な保育を実施する場合には、保護者の状況に配慮するとともに、子どもの福祉が尊重されるよう努めること。 (4) 子どもに障害や発達上の課題が見られる場合には、市町村や関係機関と連携及び協力を図りつつ、保護者に対する個別の支援を行うよう努めること。 (5) 保護者に育児不安等が見られる場合には、保護者の希望に応じて、個別の支援を行うよう努めること。 (6) 保護者に不適切な養育等が疑われる場合には、市町村や関係機関と連携し、要保護児童対策地域協議会で検討するなど適切な対応を図ること。 また、虐待が疑われる場合には、速やかに市町村又は児童相談所に通告し、適切な対応を図ること。 (1)子どもの保育と密接に関連した保護者支援 (2)保護者との相互理解 (3)保護者の仕事と子育ての両立等への支援 (4)障害や発達上の課題が見られる子どもとその保護者に対する支援 (5)保護者に対する個別支援 (6)保護者に不適切な養育等が疑われる場合の支援
https://w.atwiki.jp/jobmemo/pages/22.html
「保育の原理」とは、子どもの保育に携わる者の原理原則として、すべての保育所が共通に理解し、認識しなければならないものです。保育所がその役割を適切に果たすために、保育所の職員全員が、保育の目標を達成するためにはどのように保育したらよいのかを理解し、保育の環境に留意しながら実践を重ねていくことが必要です。
https://w.atwiki.jp/jobmemo/pages/132.html
(2)職員一人一人が課題を持って主体的に学ぶとともに、他の職員や地域の関係機関など、様々な人や場との関わりの中で共に学び合う環境を醸成していくことにより、保育所の活性化を図っていくことが求められる。 ①子どもの福祉の増進のための学び 保育所は子どもや保護者に限らず、地域の人や組織と多様な関係を持っています。職員は子どもとの生活や保護者との対話をはじめ、地域の主任児童委員や民生委員との情報交換、専門機関との事例検討、子どもの就学先や地域の学校との連携、地域の子育て支援活動、養成校の実習生受け入れ、学生や社会人のボランティア体験、要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)等の地域ネットワーク作りなど、様々な活動を通じて、互いに学び合いを重ねています。 それぞれの立場や役割は異なっていても、こうした関わりや活動の一つ一つは子どもの最善の利益への思いによって結ばれており、それらが連動して地域で生まれ育つ子どもの福祉増進に貢献しているといえます。 ②「育ち」「育てる」ことのために 保育所は子どもの生活の場所であり、職員にとっては仕事の場所であり、また保護者にとっては大切な我が子を託す場所です。しかし、見方を変えると、子どもは遊びを通して学び、保護者は子育てを通して学び、職員は仕事を通して学んでいます。そして保育所職員は、その専門性や人間性を発揮して、子どもとの生活を、その生活を通して、より望ましい生活へ高めていくために、常に学び続ける存在です。職員は常に子ども一人一人にとって何が最善なのかを第一に考えて、主体的に福祉の増進と発達の保障を図らなければなりません。 現代は多様な価値観が混在し、保護者との関係にも様々な課題があります。様々な人との共生を求め、子どもの最善の利益に配慮した保育と子育て支援の実現が保育所には求められます。職員が保育所で働くということは、保育を通じて、その価値を共有する社会を実現しようとする文化的な営みに参加しているといえるでしょう。 このように保育所は、地域で生活を共にする人々の学び合いの場であり、子どもの最善の利益を第一に考える生活の価値を創造する場でもあります。 職員一人一人が主体的に学び合う者として存在することにより、保育所は活性化し、質の高い保育が実現していきます。こうした環境を創り出すための条件整備が求められます。 保育所は人が「育ち」「育てる」という人類普遍の価値を共有し、継承し、広げることを通じて社会に貢献していく重要な場なのです。
https://w.atwiki.jp/jobmemo/pages/127.html
施設長は、第1章から第6章までに示された内容を踏まえて保育所を運営するために、保育の実施と運営上の根拠となる法令はもちろん、基本的な関連法令(福祉分野に限らず雇用・労働、防災、環境への配慮に関するもの等)や、保育に関わる倫理等を正しく理解しておくことが必要です。 とりわけ、第1章(総則)で示された保育所の役割と社会的責任を適切に果たすために、施設長は自己評価や第三者評価の実施、保護者の苦情解決などを通して、保育の質の向上を図るとともに、地域住民に対して保育所に関する情報を提供することが求められます。 施設長が果たす役割は大きく、常に保育所運営等の課題を自覚し、人間性を高めるなど、日頃から研鑽に努める必要があります。施設長は、保育指針に示される原理原則を踏まえ、保育の理念や目標に基づき、子どもの最善の利益を根幹とする保育の質の向上を図り、その社会的使命と責任を果たすよう、組織の長としてのリーダーシップを発揮することが肝要です。
https://w.atwiki.jp/jobmemo/pages/102.html
(1)子どもの最善の利益を考慮し、子どもの福祉を重視すること。 (2)保護者とともに、子どもの成長の喜びを共有すること。 (3)保育に関する知識や技術などの保育士の専門性や、子どもの集団が常に存在する環境など、保育所の特性を生かすこと。 (4)一人一人の保護者の状況を踏まえ、子どもと保護者の安定した関係に配慮して、保護者の養育力の向上に資するよう、適切に支援すること。 (5)子育て等に関する相談や助言に当たっては、保護者の気持ちを受け止め、相互の信頼関係を基本に、保護者一人一人の自己決定を尊重すること。 (6)子どもの利益に反しない限りにおいて、保護者や子どものプライバシーの保護、知り得た事柄の秘密保持に留意すること。 (7)地域の子育て支援に関する資源を積極的に活用するとともに、子育て支援に関する地域の関係機関、団体等との連携及び協力を図ること。 (1)子どもの最善の利益 (2)保護者との共感 (3)保育所の特性を生かした支援 (4)保護者の養育力向上への寄与 (5)相談・助言におけるソーシャルワークの機能 (6)プライバシーの保護及び秘密保持 (7)地域の関係機関との連携・協力
https://w.atwiki.jp/jobmemo/pages/101.html
保育所における保護者への支援は、保育士等の業務であり、その専門性を生かした子育て支援の役割は、特に重要なものである。保育所は、第1章(総則)に示されているように、その特性を生かし、保育所に入所する子どもの保護者に対する支援及び地域の子育て家庭への支援について、職員間の連携を図りながら、次の事項に留意して、積極的に取り組むことが求められる。 【保護者支援の原則】 児童福祉法第18 条の4 は、「この法律で、保育士とは、第18 条の18 第1 項の登録を受け、保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術を持って、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者をいう。」と定めています。 保育士の重要な専門性の一つは保育であり、二つは児童の保護者に対する保育に関する指導(以下「保育指導」という。)です。以下に度々触れるように、保育士等の保護者に対する支援は、何よりもこの保育という業務と一体的に深く関連していることを常に考慮しておく必要があります。 コラム: ◎ 「保育指導」の意味 子どもの保育の専門性を有する保育士が、保育に関する専門的知識・技術を背景としながら、保護者が支援を求めている子育ての問題や課題に対して、保護者の気持ちを受け止めつつ、安定した親子関係や養育力の向上をめざして行う子どもの養育(保育)に関する相談、助言、行動見本の提示その他の援助業務の総体をいいます。 【地域子育て支援の原則】 児童福祉法第48 条の3 は、「保育所は、当該保育所が主として利用される地域の住民に対してその行う保育に関して情報の提供を行い、並びにその行う保育に支障がない限りにおいて、乳児、幼児等の保育に関する相談に応じ、及び助言を行うよう努めなければならない。」と定めています。 相談・助言は、保護者支援に欠かせない専門的機能です。法律において、保育所における通常業務である保育に支障をきたさない範囲でこれを行うことを明記しています。すべての保育所がその限界を超えて支援を行う必要はありません。 しかし、近年一層地域子育て支援の役割が重視されてきている状況を踏まえ、地域子育て支援の意義を認識し、積極的に取り組むことが必要とされます。特に児童福祉法第21 条の9 で定められている子育て支援事業のうち、第1 項第2 号の「保育所その他の施設において保護者の児童の養育を支援する事業」のように、保育所の特性を生かした取組が求められています。 地域における様々な子育て支援活動と連携し、それぞれの地域の特徴、保育所の特性を踏まえ、それを生かして進めることが大切です。 またこの条文では、保育所の地域に対する情報提供の努力義務が明記されていますが、この業務も地域における子育て支援と深く関係しています。 【入所児童の保護者との連携の原則】 児童福祉施設最低基準第36 条は、「保育所の長は、常に入所している乳児又は幼児の保護者と密接な連絡をとり、保育の内容等につき、その保護者の理解及び協力を得るよう努めなければならない。」と定めています。保育所における保育が、保護者との密接な連携のもとで行われることは、子どもの最善の利益を考慮し、子どもの福祉を重視した保護者支援を進める上で不可欠なものです。 【特別の支援を必要とする家庭及び児童の優先入所の原則】 保育所は、市町村が「保育に欠ける」と判断し、入所を受託した乳幼児の保育を行うことを目的としています。これに関連し、児童虐待の防止等に関する法律第13 条の2 は、市町村が保育所に入所する児童を選考する場合には、「児童虐待の防止に寄与するため、特別の支援を要する家庭の福祉に配慮しなければならない。」と定めています。また母子及び寡婦福祉法(昭和39 年法律第129 号)第28 条は、市町村が保育所に入所する児童を選考する場合には、「母子家庭等の福祉が増進されるように特別の配慮をしなければならない。」と定めています。さらに、発達障害者支援法(平成16 年法律第167 号)第7 条は、市町村は保育の実施に当たって、「発達障害児の健全な発達が他の児童と共に生活することを通して図られるよう適切な配慮をするものとする。」と明記しています。 これらの法の趣旨を踏まえ、特別の支援を必要とする家庭や保護者の保育や子育て支援に留意することが重要です。 【保育所における二つの保護者支援】 保育所における保護者に対する支援には、大きく次の二つがあります。その一つは、入所している子どもの保護者に対する支援です。もう一つは、保育所を利用していない子育て家庭も含めた地域における子育て支援です。前者に関しては、保育所は本来業務としてその中心的な機能を果たします。また、後者に関しては本来業務に支障のない範囲において、その社会的役割を十分自覚し、他の関係機関、サービスと連携しながら、保育所の機能や特性を生かした支援を行います。地域子育て支援活動は、現在、様々な専門職、ボランティア、当事者などが担っています。その中でも、日々子どもを保育し、子どもや保育に関する知識、技術、経験を豊かに持っている保育所が、保護者や子どもとの交流、保護者同士の交流、地域の様々な人々との交流を通じて、その特性を生かした活動や事業を進めています。 【子育て支援の機能と特性】 保育所は、以下のような子育て支援の機能、特性を持っています。つまり、①日々、子どもが通い、継続的に子どもの発達援助を行うことができること、②送迎時を中心として、日々保護者と接触があること、③保育所保育の専門職である保育士をはじめとして各種専門職が配置されていること、④災害時なども含め、子どもの生命・生活を守り、保護者の就労と自己実現を支える社会的使命を有していること、⑤公的施設として、様々な社会資源との連携や協力が可能であること、の5 点です。保育所の子育て支援は、男女共同参画社会の進展や家庭の養育力の低下などの今日的状況を踏まえ、こうした保育所の特性や保育環境を生かして進めていくことが必要とされています。 1.保育所における保護者に対する支援の基本 (1)子どもの最善の利益 (2)保護者との共感 (3)保育所の特性を生かした支援 (4)保護者の養育力向上への寄与 (5)相談・助言におけるソーシャルワークの機能 (6)プライバシーの保護及び秘密保持 (7)地域の関係機関との連携・協力 2.保育所に入所している子どもの保護者への支援 (1)子どもの保育と密接に関連した保護者支援 (2)保護者との相互理解 (3)保護者の仕事と子育ての両立等への支援 (4)障害や発達上の課題が見られる子どもとその保護者に対する支援 (5)保護者に対する個別支援 (6)保護者に不適切な養育等が疑われる場合の支援 3.地域における子育て支援 (1)地域における子育て支援の内容 (2)地域子育て支援における地域との連携 (3)地域における関係づくり及び問題発生予防と早期対応
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①伝達と説明 家庭との適切な連携を図り、保育を行っていくためには、日々の保育の意図を保護者に説明する努力が必要であり、保護者が保育の方針や意図について理解していることが望まれます。そのためには、保育方針や保育課程の内容、どのような意図で日々の保育や環境づくりが行われているかなどについて、入所前の見学時、入所時、日々の対話や連絡、行事などの機会をとらえ保護者が理解しやすい情報や形で伝えていくことが必要です。 養護と教育が一体となった保育を行っているという保育所の全体像について保護者に知らせることは、保護者が子育ての参考にし、また就学までの子どもの発達の見通しを持つためにも、有効なことです。保育指針の内容を紹介したり、その内容を活用した情報提供や助言を行うなどの工夫も望まれます。 子どもの生活は、家庭から保育所へ、保育所から家庭へと連続しており、家庭と保育所との相互理解は、子どもの安定的な保育に欠かせないものであるといえます。保育所は、家庭との連携を基本としていることを常に明瞭にし、入所時にもそのことを保護者に伝えておく必要があります。 ②信頼関係の構築 保育所と保護者との信頼関係は、相互の意思疎通の積み重ねによって成り立っていきます。具体的には、子どもに関する情報の交換を細やかに行うこと、保育士と保護者の間で子どもへの愛情や成長を喜ぶ気持ちを伝え合うこと、保護者のおかれている状況やその思いを受け止め理解を示すこと、保護者が保育の意図を理解できるように説明する機会を提供すること、保護者に疑問や要望がある場合は、対話を通して誠実に対応することなどが必要です。
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ア 生活に必要な基本的な習慣や態度を身に付けることの大切さを理解し、適切な行動を選択できるよう配慮すること。 保育所において子どもは、生活に必要な基本的な習慣や態度を身に付け、自分でできるという達成感と満足感を味わいながら、自分の生活をつくり出していきます。子どもは友達がすることや大人の姿を確認しつつ、生活に必要な習慣や態度を身に付けていきます。特に保育士等の存在は、子どもにとって重要なモデルとなることを自覚して、自らの生活を常に省みる必要があるでしょう。 子どもは、生活に必要な基本的な習慣や態度を身に付けることで、心身の健康を保持し、快適に過ごせるようになります。そしてその中で、自分に自信を持ち、自分を好ましい存在として受け入れていくことができるようになります。こうした心身の健全と自己肯定感は、子どもが自ら安心して環境に働きかけ、自分を発揮していくための土台となります。 子どもが生活の様々な場面で自分なりに考え、理解し、判断しながら適切な行動を選択できるように援助していくことが大切です。 イ 子どもの情緒が安定し、自己を十分に発揮して活動することを通して、やり遂げる喜びや自信を持つことができるように配慮すること。 子どもは、保育士等や仲の良い数人の友達との安定した関係を基盤に、活動の範囲を広げ、やがて数人のグループや仲間と共に活動に取り組むようになります。また、徐々に、意図や目標を持ち、自分なりの見通しを持って活動するとともに、友達と一緒に楽しんだり、遊びを持続させたりするために工夫するようになります。 子どもが、十分に自己を発揮して遊びを楽しんだり、自分の力でやり遂げる経験を重ねていくことができるように、保育士等は子ども同士の関わりを見守り、子どもの考えや気付きを十分に認めていきます。そして、子どもが主体的な活動を通して、満足感や充実感とともに自分への自信を高め、自己肯定感を育んでいくことができるよう援助していきます。自分の存在を大事にすることは、友達や周囲の人たちを大切にしようとする気持ちにつながっていきます。 ウ 様々な遊びの中で、全身を動かして意欲的に活動することにより、体の諸機能の発達が促されることに留意し、子どもの興味や関心が戸外にも向くようにすること。 近年、多くの子どもにおいて戸外で体を動かす経験が減少しています。保育所では、子どもが十分に体を動かし、戸外で伸び伸びと遊ぶことができるように保育の計画を立て、園庭などの環境整備に配慮することが重要です。 戸外でもままごとなどのごっこ遊びを楽しんだり、季節の草花や昆虫など身近な自然と関われるようにしたり、子どもの興味と関心に即して園庭の環境を構成していきます。また、様々な運動用具や遊具を用意して、子どもが体を動かして十分遊べるようにします。思い切り体を動かし、息を切らし、汗をかいて遊んだり活動したりする経験は、子どもの身体機能を高めるだけでなく、子どもの達成感や充実感につながります。 3歳以上の子どもが、園庭で活発に遊ぶ場合には、低年齢の子どもが遊ぶ場所と区分したり、時間をずらすなど、行動の実態を考慮して、安全上の配慮をすることが必要です。 また、子どもが動植物をはじめとする様々な自然に触れ、季節感を味わうことができるよう、公園や野原など、保育所外へ出かけて活動する機会を持つことも大切です。そのような場合には、保育士等は常に子どもの安全及び衛生に配慮することが欠かせません。 エ けんかなど葛藤を経験しながら次第に相手の気持ちを理解し、相互に必要な存在であることを実感できるよう配慮すること。 子どもは、グループや集団で遊ぶようになると、けんかなど葛藤を経験するようになります。そして、互いの主張をどのように調整したらよいのかを考えるようになりますが、相手の立場に立って、相手の気持ちを理解し、自分の気持ちをコントロールしていくことはたやすいことではありません。保育士等は子ども同士のやり取りやぶつかり合いを見守りながら、必要に応じて相手の気持ちを知らせ、子どもの心の安定に配慮して援助することが大切です。 しかし、子どもは、葛藤を乗り越えていく力を持っています。友達の気持ちを察しながら、交渉したり、合意したり、様々なやり取りを通して問題を解決しようとします。さらに、役割分担をしながら一緒に遊びを展開していく中で、互いの存在が必要であることを感じていきます。 保育士等はそれぞれの子どもの良いところや得意なことを積極的に認め、他の子どもに伝えていくことが大切です。一人一人がかけがえのない存在であるという保育士等の子どもへの思いは生活の様々な場面で子どもたちに伝わっていきます。 オ 生活や遊びを通して、決まりがあることの大切さに気付き、自ら判断して行動できるよう配慮すること。 前述の1のイ「人間関係」の(ア)ねらいや(イ)内容の⑪などで示されたように、保育所には、生活や遊びに関する様々な決まりごとがあります。 子どもは、ルールのある遊びを楽しんだり、約束を守って遊ぶうちに、それらを守って遊ぶことで、遊びが継続したり、友達と一緒により楽しめることを実感していきます。 また、子どもは、自分たちでルールをつくり出し、それを共有することで遊びを深めていくとともに、同じ遊びを一緒に楽しむ仲間とのつながりを深めていきます。保育士等は、子どもが決まりを守ったり、自分たちで決まりをつくったり変えたりする経験を大切にしていきながら、子どもが友達との関わりの中で、自分自身で考え、判断して行動する力を培っていくことができるようにしていくことが重要です。 カ 自然との触れ合いにより、子どもの豊かな感性や認識力、思考力及び表現力が培われることを踏まえ、自然との関わりを深めることができるように工夫すること。 前述の1のウ「環境」の(ア)ねらいや(イ)内容の③、⑤、⑥、⑦などで示されたように、子どもは、自然の不思議さに心を躍らせ、自然に触れることを喜び、更に探求しようとする意欲を持っています。 こうした子どもの意欲や感情は、身近な保育士等が自然に寄せる心情や自然と関わる姿などに影響を受けます。子どもの豊かな感性や自然との積極的な関わりは、子どもと保育士等が共に自然との触れ合いを楽しみ、それらを遊びや生活に取り入れることにより深められます。保育士等は、花壇での草花の栽培、菜園作り、小動物の飼育等、保育所の様々な自然環境を工夫することで、子どもが楽しんで自然と関わっていかれるようにしていきます。 子どもは自然と触れ合う中で心を落ち着けたり、好奇心や探求心を高めていきます。動植物や昆虫など身近な自然との関わりの中で、子どもが気付き、様々に試したり、じっくりと考えたりする経験を重ねていくことができるよう、環境構成に配慮し、働きかけていくことが大切です。 また、子どもが自然と関わった際の感動や喜びを、言葉や音楽、絵画や造形などによって表現することができるよう、様々な素材や用具などを準備し、創造的な活動の展開を援助していきます。 キ 自分の気持ちや経験を自分なりの言葉で表現することの大切さに留意し、子どもの話しかけに応じるよう心がけること。また、子どもが仲間と伝え合ったり、話し合うことの楽しさが味わえるようにすること。 前述1のエ「言葉」のねらいや「内容」の③、④、⑤、⑥などで示されたように、言葉は、身近な人との応答的な関わりの中で、次第に獲得されていきます。 子どもは、温かい雰囲気の中で、保育士等や友達と言葉を交わしたり、自分の気持ちを伝えたり、相手を理解したりすることに喜びを感じます。こうした体験を積み重ねることで、更に自分の気持ちを言葉で伝えようとする意欲が高まります。 保育士等は、言葉で表現する子どもの姿や話の内容を十分に認めるとともに、適切な言葉で応えながら、分かりやすく話せるよう援助していくことが大切です。また、子どもが友達との会話を楽しんだり、伝え合うことや理解し合うことの喜びを味わっていくことができるよう、遊びや生活の様々な場 面をとらえ、適切に援助することが必要です。 また、グループごとに話し合ったり、自分たちで活動していくための取り決めをしたりすることを取り入れながら、友達と言葉を交わしていく体験や、意見を言い合い調整するなどを大切にすることも必要です。 ク 感じたことや思ったこと、想像したことなどを、様々な方法で創意工夫を凝らして自由に表現できるよう、保育に必要な素材や用具を始め、様々な環境の設定に留意すること。前述の1のオ「表現」の(ア)ねらいや(イ)内容の④、⑤、⑥、⑦、⑧などで示されたように、子どもは、自分の生活体験の中で感じたこと、思ったこと、想像したことなどを、再現したり、保育士等や友達に伝えようとしたり、更にイメージを広げようと工夫を凝らしたりしながら様々な手段で表現しようとします。 保育士等は、子どもが喜んで表現しようとする姿を日々の保育の中でみいだし、子どもの表現が更に豊かなものになるように、見通しを持ちながら、十分な数の遊具や用具や素材を、子どもが自由に使える場所に準備しておくことが大切です。その際には、子どもの発達過程や興味、関心に応じて、素材の材質や形態にも配慮しなければなりません。また、じっくりと取り組めるスペースやコーナーなどの環境に配慮するとともに、時間をかけて継続的に取り組んでいかれるようにすることも大切です。そして、子どもが表現していく過程を大切にし、自由な自己表現を十分に楽しめるようにしていきます。 子どもの創作意欲や自由な発想に触れることで、保育士等の表現力や創意工夫が促されていくこともあります。子どもと表現活動を楽しみながら、自らの感性やセンスを磨いていくことが求められます。 ケ 保育所の保育が、小学校以降の生活や学習の基盤の育成につながることに留意し、幼児期にふさわしい生活を通して、創造的な思考や主体的な生活態度などの基礎を培うようにすること。 子どもは保育所の中で、幼児期にふさわしい生活を通して、様々な経験を積み重ねていきます。また、様々な人や物との関わりを通して、多様な体験をする中で、心身の調和のとれた発達が促されます。一つの活動が子どもの意欲を高め、次の活動を生み出していくなど、一つ一つの体験が相互に結びつき、子どもの生活が生き生きとつくられていくのです。 子どもが十分に自己を発揮し、友達との関わりを深め、友達に対する思いやりの気持ちや仲間意識を持つことは重要であり、人と関わる力の基礎が保育所の生活の中で培われていくことが求められます。また、自ら環境と関わり、自分でできることは自分でしたり、自分で判断したりしていく主体的な生活態度の基礎を養っていくことも幼児期の大きな課題です。 さらに、子どもが、自然事象や身の回りの事物に興味や関心を持ってその現象や仕組みを更に探求しようとしたり、自ら創意工夫して様々な手段で、またそれらを組み合わせて表現しようとすることは、創造的な思考の基礎となります。 保育所の生活の中で、子どもが生涯にわたる生きる力の基礎を培っていること、また、子どもが様々な経験を通して、創造的な思考や主体的な生活態度の基礎を培っていること、そして、これらが小学校以降の生活や学習の基盤となっていくことを保育士等は十分に理解しなければなりません。 このために、保育所では乳幼児期にふさわしい生活が豊かに展開され、適切な保育が行われるように、創意工夫を図り、保育の内容を構築していくことが重要です。 以上のように、保育指針に示された保育の内容として、「養護に関わるねらい及び内容」、「教育に関わるねらい及び内容」がそれぞれに示されています。実際に保育する上では、第4章「保育の計画と評価」にあるように、子どもの発達過程などに応じて柔軟に計画を作成していきます。 また、保育指針に示されたねらい及び内容と子どもの発達との関連を的確にとらえることが重要です。そのための参考となる例示が次頁にありますが、これは、子どもの発達過程における保育の視点として一つの参考例です。 この章の前文や、各項目の前文などで述べられているように、各保育所では養護と教育及び教育の5領域を総合的にとらえながら、0歳から6歳までの保育の内容を具体的に構築していくことが求められます。その際、第2章「子どもの発達」とこの章の「保育の内容」の趣旨を踏まえ、発達の連続性に留意しながら、子どもの全体像をとらえていくことが大切です。 【参考】子どもの発達過程における保育の視点(例:「言葉」) ※ 子どもの様々な発達の側面は0歳からの積み重ねであることや実際の保育においては、養護と教育の一体性及び5領域の間の関連性に留意することが必要である。 ※ 子どもの発達を見通しを持ってとらえることが、保育課程の編成や指導計画の作成などに生かされる。 言葉 発達過程 子どもの発達と保育をとらえる視点 Ⅰ.おおむね6か月未満 ○あやされて声を出したり笑ったりする。 ○保育士等の子守歌を聴いたり、保育士等が話している方をじっと見る。 ○保育士等の声や眼差しやスキンシップ等を通して、喃語が育まれる。 Ⅱ.おおむね6か月から1歳3か月未満 ○身近な大人との関わりを通し、喃語が豊かになる。指さしやしぐさなどが現れはじめる。 ○保育士等に優しく語りかけられることにより、喜んで声を出したり、応えようとする。 ○保育士等と視線を合わせ、喃語や声、表情などを通してやり取りを喜ぶ。 Ⅲ.おおむね1歳3か月から2歳未満 ○指さし、身振りなどで自分の気持ちを表したり、徐々に簡単な言葉を話し始める。 ○保育士等の話しかけややり取りの中で、声や簡単な言葉を使って自分の気持ちを表そうとする。 ○保育士等の話しかけや絵本を読んでもらうこと等により言葉を理解したり、言葉を使うことを楽しむ。 Ⅳ.おおむね2歳 ○保育士等と触れ合い、話をしたり、言葉を通して気持ちを通わせる。 ○保育士等を仲立ちとして、生活や遊びの中で簡単な言葉でのやり取りを楽しむ。 ○絵本などを楽しんで見たり聞いたりして言葉に親しみ、模倣を楽しんだりする。 Ⅴ.おおむね3歳 ○生活に必要な言葉がある程度分かり、したいこと、してほしいことを言葉で表す。 ○友達の話を聞いたり、保育士等に質問したりするなど興味を持った言葉や、言葉によるイメージを楽しむ。 ○絵本、物語、視聴覚教材などを見たり、聞いたりしてその内容や面白さを楽しむ。 Ⅵ.おおむね4歳 ○自分の経験したことや思っていることを話したりして、言葉で伝える楽しさを味わう。 ○様々な言葉に興味を持ち、保育士等や友達の話を聞いたり、話したりする。 ○絵本、物語、視聴覚教材などを見たり、聞いたりしてイメージを広げる。 Ⅶ.おおむね5歳 ○自分で考えたこと経験したことを保育士等や友達に話し、伝え合うことを楽しむ。 ○様々な機会や場で活発に話したり、保育士等や友達の話に耳を傾ける。 ○絵本、物語、視聴覚教材などを見たり、聞いたりしてイメージを広げ、保育士等や友達と楽しみ合う。 Ⅷ.おおむね6歳 ○自分の経験したこと、考えたことなどを言葉で表現する。 ○人の話を聞いたり、身近な文字に触れたりしながら言葉への興味を広げる。 ○絵本、物語、視聴覚教材などに親しみ、保育士等や友達と心を通わせる。
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保育の環境には、保育士等や子どもなどの人的環境、施設や遊具などの物的環境、更には自然や社会の事象などがある。保育所は、こうした人、物、場などの環境が相互に関連し合い、子どもの生活が豊かなものとなるよう、次の事項に留意しつつ、計画的に環境を構成し、工夫して保育しなければならない。 ア 子ども自らが環境に関わり、自発的に活動し、様々な経験を積んでいくことができるよう配慮すること。 イ 子どもの活動が豊かに展開されるよう、保育所の設備や環境を整え、保育所の保健的環境や安全の確保などに努めること。 ウ 保育室は、温かな親しみとくつろぎの場となるとともに、生き生きと活動できる場となるように配慮すること。 エ 子どもが人と関わる力を育てていくため、子ども自らが周囲の子どもや大人と関わっていくことができる環境を整えること。 ①環境を通して行う保育の重要性 保育の環境については、前項までに何度か述べられていますが、それは、保育の環境が多岐にわたるものであるとともに、様々な事柄との関連性があり、たいへん重要であるからです。 保育所における保育の基本は、環境を通して行うことです。保育の環境とは保育士等や子どもなどの人的環境、設備や遊具などの物的環境、そして、自然や社会の事象などであり、こうした人、物、場が相互に関連し合って保育の環境が作り出されていきます。 子どもが環境との相互作用によって成長・発達していくことを基本的に理解し、子どもの状況により様々に変化していくなど応答性のある環境にしていくことが重要です。さらに、乳幼児期の子どもの成長にふさわしい保育環境をいかに構成していくかが保育の質に関わるものであることを保育士等が自覚しなければなりません。 環境を通して行う保育の重要性を踏まえ、「子どもの生活が豊かなものとなるよう」保育の環境に関する4つの留意点を設け、「計画的に環境を構成し、工夫して保育しなければならない」としています。 ②子ども自らが関わる環境 まず、「子ども自らが環境に関わり、自発的に活動し、様々な経験を積んで」いかれるようにすることが重要であるとしています。 子どもが思わず触りたくなるような、動かしてみたくなるような、関わりたくなるような魅力ある環境を構成することが重要です。また、子どもの興味、関心などが触発され、それまでの経験で得た様々な能力が十分に発揮されるよう工夫して環境を構成するとともに、遊びが展開する中で、子ども自らが環境を再構成したり、環境が変化したりすることを子どもたちと共に楽しむことも大切でしょう。保育士等が、保育所の自然環境などを生かした環境を構成することも求められます。 ③安全で保健的な環境 次に、施設などの環境整備を通して、「保育所の保健的環境や安全の確保などに努めること」としています。子どもの健康と安全を守ることは保育所の基本的かつ重大な責任です。全職員が常に心を配り、確認を怠らず、子どもが安心、安全に過ごせる保育の環境を保育所全体で整え、子どもの命を守り、その活動を支えていきます。 ④温かな雰囲気と生き生きとした活動の場 保育所は子どもが長時間生活する「温かなくつろぎの場」であるとともに、「生き生きと活動できる場」となるよう環境を構成することが必要です。 保育所の生活全体を捉えながら活動の静と動のバランスや子どもの発達過程などを踏まえ、一人遊びや少人数での遊びに集中したり、ほっとくつろげる時間と空間が保障される環境であるとともに、友達と一緒に思いきり体を動かすなど様々な活動に取り組むことのできる環境であることが重要です。 ⑤人との関わりを育む環境 さらに、「人と関わる力」を育てていくことの重要性に鑑み、「子ども自らが周囲の子どもや大人と関わっていくことができる環境」が必要であるとしています。子どもは身近な子どもや大人の影響を受けて育ちます。子どもが様々な人と関わる状況を作り出すことが大切であり、同年齢の子ども同士の関係、異年齢の子どもとの関係、保育士等との関係や地域の様々な人との関わりなどによって様々な感情や欲求が生まれることを踏まえ、保育の環境を構成していきます。複数の友達と遊べる遊具やコーナーなどを設定するとともに、保育所内外の物の配置や子どもの動線などに配慮した保育の環境づくりが必要です。 子どもが人とのやり取りを楽しみながら、子ども相互の関わりや周囲の大人との関わりが促されるような環境を構成していくことが求められます。